Vol.7の続きです。
エレクトリックバイオリンで下手なことをすると
「やっぱりエレキはアカンな」
と、したり顔で言われる現在(2017年)。
では、かっこよく弾くと何と言われるのでしょうか?
「エレキはズルい!」
おぉ、何て風当たりの強いことだろう!(笑)
もちろん、こういうことを言うのはエレクトリックを弾いたことが無い方々であり、一度でも本気でエレクトリックを弾いてみたことがある方なら決して言いません。
数百年間の英知の結晶である楽器の性能におんぶに抱っこに肩車までできるアコースティックの方が遥かにズルい(笑)ことを知っているからだと思われます。
エレクトリックギターとギターが違うように
エレクトリックヴァイオリンはヴァイオリンの代用品ではありません。
(日本の住宅事情で練習用として宣伝されているために誤解されている部分も多いかもしれませんが)
他の楽器と同じく、本気で研究し、作り、演奏する人がいます。
エレクトリックヴァイオリンは楽器自体の性能がまだ低い分アコースティックよりも演奏が難しいところがあります。
その音にはアコースティックのようなまろやかさも伸びもなく、強弱もつきにくいのです。
なかなか歌ってくれません。
さらに、マイク(ピックアップ)が楽器に内蔵されているということは
「楽器に耳をあてて聞いているようなもの」
なので、アコースティックよりもむしろ繊細に丁寧に弾かないと雑な音になりやすいのですが、ここもほとんど知られていないところです。
いろいろな場所で演奏させていただくようになり、「アコースティック」の音量では足りず
「アコースティックをマイクで拾う」
または
「エレクトリック」
の必要が出てきました。
まずは、ヴァイオリンをマイクで拾うとどんな音になるのでしょうか?
ボーカル用マイク、楽器用マイク、楽器に付けられるミニマイクといろいろ試してみました。
人の耳は聞きたい音だけを無意識に選んで聞いています。
ところがマイクは
楽器に手が当たる音から
奏者の鼻息
周囲の雑音などなど
あらゆる望まない音までも拾ってしまうのと
機材によってもかなり音が変わるので
アコースティック楽器の音をそのままに聴こえるように拾うのはかなり難しい。
というか、ほぼ不可能…。
つまり「アコースティックの音」と「アコースティック楽器をマイクで拾った音」は全く別物でした。
エレクトリックは弦や駒の振動を空気を介さずに拾うので外部からのノイズは少ないという利点があります。
しかし楽器全体の鳴りを余すところなく拾うわけではないので細い音になりがち。
このように
アコースティック+マイクも
エレクトリックも
どちらも一長一短。
ということは、生音が美しいからといって
ヴァイオリンをマイクで拾うことが必ずしも良いことでもなく
「純粋にスピーカーから出る音だけ」
で考えるならば、「ヴァイオリン+マイク」よりも「美しい音」あるいは「面白い音」のエレクトリックヴァイオリンを作れたとしてもおかしくないのじゃないか?
そんなことを考え始めました。
ヴァイオリンと同じ感覚で弾けること
マイクで拾ったヴァイオリンよりも美しい(面白い)音色
ヴァイオリンには無い低音域を出せること
会場の広さや響きに左右されない安定感
豊かな表現力
これらが私のヴァイパー改造の目標。
配線を変えてみたり、ピックアップシステムごと変えてみたり、本体に手を加えてみたり、思いつくことを片っぱしから試しました。
約20年分の試行錯誤を詰め込んで改造ヴァイパーは私の思い描く楽器にかなり近づいてくれたと思います。
きっとまだまだ良くなります♪
改造ヴァイパー(緑)音源例
アイリッシュバンド“みゅーず”
ギター:西川聖悟郎
ヴァイパー:大城敦博
○Vol.9 琉球ヴァイオリン
○ヴァイパー奏者の覚書 一覧