Vol.7「琉球ヴァイオリン – Ryukyuish Violin (Old-Okinawan Violin Music)」

沖縄に生まれ、幼い頃から口ずさんできた島の唄を、器楽(楽器の音楽)で聴いてみたいと思いながら育った。

ところが、生演奏はもちろん、テレビやラジオから毎日聞こえてくるものもすべて唄。

なぜ器楽が聴けないのか?

十数年待ち続け、大きくなってようやくわかった。
そもそも沖縄音楽には器楽はほとんど無かったらしい。

それならば、というわけでずっと聴きたかった音楽を自分で作ってみることにした。

使う楽器はヴァイオリン。
小さい頃から身近にあったこの楽器で、小さい頃から口ずさんだ音楽を弾くことは、私にとってはごく自然なことだったので「沖縄音楽だから沖縄の楽器で…」というような考えは全く浮かばなかった。

「てぃんさぐぬ花」に三線のような左手ピチカート伴奏を加えることで、それは突然形になった(1993年)。

ところが器楽演奏はまだクラシック音楽しか知らなかったその頃。

一回り40秒程度の繰り返しでは楽曲にはならず、もっと複雑に展開していかなければならないものと思い込み、すでに1つの完成形にたどり着いていたことに、当時の私は気がつかなかった。

民謡主題の変奏曲を作ってみた。

ひとまず形になったものの、沖縄の雰囲気を残そうとすると変化に欠け、自由に盛り上げようとすると沖縄からかけ離れた雰囲気になりがちなそれらの曲に、祖母は言った。

「綺麗だけど、沖縄の曲には聞こえないねぇ」

それは沖縄音楽ではなくクラシック風音楽だった。

どうすれば沖縄らしい器楽になるのか?

長い年月をかけ、ポップス風、ロック風、ジャズ風、どの○○風音楽を試しても沖縄らしさは弱く、たやすく他ジャンルに飲み込まれてしまうようだった。

やがて出会った大きなヒントはアイリッシュ音楽。

ヴァイオリンを使いながらも、クラシックとは全く異なる雰囲気をもつ音楽。
繰り返しの面白さ!

イタリアで生まれたヴァイオリンは、その豊かな表現力からか世界各地で民俗(民族)楽器としてもよく使われている。

ちょっと挙げてみるだけでも、ジプシーヴァイオリン、アイリッシュフィドル、ブルーグラスフィドル、インドヴァイオリン等々、これらは楽器名というよりは音楽ジャンルを表している名前で、いずれも楽器はクラシック音楽で使われるヴァイオリンと同じと考えてほぼ間違いない。

それぞれのジャンルで奏法が云々と言われることもあるけれど、あえて大雑把に言うならば、ほとんどの場合
弓で弦を擦って鳴らすのだから奏法も大差ない。

私はどうやら「ヴァイオリンで弾く沖縄メロディ」ではなく、「他ジャンルとの融合」でもなく、「沖縄の民俗ヴァイオリン音楽」が聴きたかったらしい。

かつて未完成だと思っていたものに再び目を向けると、それらは以前には気がつかなかった魅力に溢れていた。

演奏するたびに
「沖縄の曲とヴァイオリンはよく合うんだね!」
と驚かれ、それからいくらも経たないうちに
「沖縄には昔からヴァイオリンがあったんだね!?」
と言われるようになった。

この音楽に『琉球ヴァイオリンRyukyuish Violin』と名付けた。

てぃんさぐぬ花(1993年)から20年が経っていた。

※ Ryukyuish Violin (Old-Okinawan Violin Music)
英語表記について。
アイルランドの音楽、ハワイの音楽をそれぞれアイリッシュ、ハワイアンと言うように「琉球の、人、文化、音楽、etc.」を表す言葉はRyukyuish または Ryukyuan。

英語圏の友人にこの2つの違いについて尋ねると、意味は同じでRyukyuishの方が響きがかっこいい!と教えてくれたのでこちらに決めた。

アコースティックヴァイオリンから始まった琉球ヴァイオリンをさらに発展させるため、現在はヴァイパー(Vol.6参照)ループペダル(Vol.5参照)を使って弾いている。

無伴奏ヴァイオリン版、広い音域を活かしたヴァイパー版、いくつものパートを重ねるループ版など曲もヴァリエーションも増え、全国各地のみならず海外でもご好評いただいている。

昨年(2016年)11月のふるさと沖縄でのコンサートの後にいただいたメッセージは、とても感慨深いものだった。

「会を重ねるごとに感動が深くなってきました。どこどこの国の音楽とか民謡という音楽をよく聴きますが、私たちの琉球音楽も世界の音楽と肩を並べて優るとも劣らないものだと知りました。」

祖母の一言を道標にようやくここまで来れた。

器楽が無いと云われてきた沖縄に、ヴァイオリン音楽が生まれてもうすぐ四半世紀。

今になってあらためて考えてみると、現在、沖縄の伝統楽器と云われる三線にしても、その昔、原型が沖縄にやってきた一番最初の時があるわけで、その楽器で唄った最初の人はもしかしたら
「あんた、変わったことしてるね、それ、どこの楽器?」
などと言われていたのかもしれない。

現代の我々が弾き継いでいったなら、百年の後に「沖縄の伝統ヴァイオリン音楽」を遺すことができるということです。

伝統は創るもの。

わくわくしませんか?

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エイサーメドレー:
七月でーびる/久高万寿主/だんじゅかりゆし/唐船どーい
(動画は七月でーびるの途中から)

久高万寿主/だんじゅかりゆし
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稲しり節
(ヴァイパー+ループペダル)